ビーチサンダル
いつもの癖で、8時前に目が覚めた。
明け方にふわふわしながら食べたチャーハンのせいで少し身体が重い。
こんな日くらい早起きしたくないのに。
小さく溜息をつきながら寝返りを打ったら、さっきまで一緒に遊んでいた友達が目の下まで布団を被って寝ているのが見えた。
また明日ね。
へらっと笑った昨日と同じ服を纏った彼女が寝癖をつけたまま出て行くのを見送って、飲みかけのコーヒーを片手にベランダに出た。
アリスブルーの空、白っぽい陽とランチに出かけるであろう人たちの声を聞きながら、ちょっと取り残された気分になる。
何を考えるわけでもなくぼうっとしてみる。
たぶん、わたしにはこういう時間がどうしても必要らしい。
つくづくマイペースだなと自分で思う。
どんなに忙しいときですら、わたしは1日に数回、数分だけ脳みそを回転させるのをやめてしまうから。
一生懸命自分を証明していた時に無意識に五感が記憶していた感覚を、ゆっくり咀嚼して、体感しなおして、仕舞う。
果てしなくて、くだらないこの瞬間が好きだったりする。
ふと、視界の端で捉えていた白い煙の先に自分の足が見えた。
かさかさしていた。
ビーチサンダルの日焼けがまだ消えていない。
遠い昔の記憶に思えるのに。
爪の藍色はとっくにない。
そうだな。
今日は休日だし、とびきり熱いシャワーを浴びたら、お気に入りのニットを着よう。
ラベンダーの香りのするクリームで、保湿をしてあげよう。
一瞬陽が陰って、冷たい風が前髪を撫でた。
寒いなあ。
もう、冬だ。
部屋着のTシャツを洗濯機に放り込みながら、そんなことを思った、昼過ぎ。