恋に恋してるとか、どこの誰の戯言って、
恋はするものじゃなくて落ちるものだって。
いつだってそうだ。
いつだってわたしは恋に落ちてきた。
ことん。と。
そんな音がする。恋に落ちると。
小気味の良い、よく響く明るくて耳障りが穏やかで、子守唄にすらなりそうな。
知ってるよ。
してきたもの。
好きなタイプは?
顔の好みは?
譲れない条件は?
そう言う類の質問が苦手だ。
すきなひとに恋をしていたときわたしは、彼が世界で一番素敵だと思っていたし、彼が理想で、彼がタイプだった。
タイプも、好みも、条件もない。
綺麗事を言うわけでもなく、本当に、純粋に、好きになった人がすべての答えだった。
きっと、それは今も変わらない。
久しぶりに、時間もお金も惜しみなく自分の為だけに使える今がある。
自分の為に料理をして、服を選んで、気ままに遊んで、ご褒美をあげて、返信が来ないとか、彼は何をしているのだろうとか、好きな人のことを考えていた時間は、全てわたしのためだけにある。
デートしよう、と声をかけてくる男性は適当に相手をして、気が向けば遊ぶし、向かなければ適当に断る。
自由で、無情で、ひどく感情的だ。
よくデートをする人がいる。
告白もされた。好きではないからと断った。わたしは自由で、彼には恋人がいる。
そんな歪んだオルゴールみたいな関係がずっと続いている。わたしはたまに、ふと、彼と付き合っちゃえば幸せだなあなんてぼんやり思う。
彼を好きになりたいな。
なんて。
思って、ちょっとだけ思わせぶりなことをして、またねって手を振って別れたって、淋しさと遣る瀬無さと情けなさに潰されてしまいそうになるのに。
ホラ。
自由で気ままなわたしは、恋に恋してるんだ。
恋はするものじゃなくて落ちるものだって。
半分惚気ながら無邪気に言い放った過去のわたしに、わたしは首を絞められた。